エクラン・オート・ルート Haute Route des Ecrins


4日目 6月29日 雨のち晴れ

ピラット小屋 Refuge de la Pilatte 〜 モン・ジオベルネ Mont Gioberney
〜 タンプル・エクラン小屋 Refuge de Temple Ecrins


出発地点と到着地点 標高 所要時間
ピラット小屋 Refuge de la Pilatte 2577m
モン・ジオベルネ Mont Gioberney VN : F 3352m 2時間30分
ピラット小屋 Refuge de la Pilatte 2577m 2時間05分
タンプル・エクラン小屋 Refuge de Temple Ecrins 2484m 2時間30分







3日目のレポでピラット氷河の美しさを少し説明したが、この迫力ある氷河を真正面に眺めることができるピラット小屋もまた私のお気に入りの山小屋だ。それはただ眺望が素晴らしいのみならず、フルコースの料理が美味しい。冷える夜には嬉しい温かい野菜スープ(1人たっぷり2杯はお代わりできる)から始まり、お肉と山では嬉しい野菜の付け合せ、チーズ、最後は手作りデザート。そして少人数毎に分かれたドミトリーは布団が備え付けられている。大抵のフランスの山小屋では肌を直接当てるとチクチクするような毛布が2枚備えられているが、ここではフカフカ布団なのだ。そしてトイレが清潔で大きな鏡つきの洗面台、シャワーもある。これだけ聞いたらもう皆さんも泊りたくなるでしょう?さらにロッカーがあるのでザック等はそこにしまい、ドミトリー内に持ち込まないため部屋に道具が散乱してない。1日中陽の当たるテラスは絶景を見ながらビールを飲むのに最高で、3時のおやつの時間には手作りタルトが楽しめる。

そんな山小屋で昨日の午後早い時間からゆっくりと休めたせいか、体調はいたって良好なのだが、朝起きると生憎の雨。予報では午後から止むらしいが、他のグループも出発を躊躇しているようだ。
今日のルートはピラット小屋を出発しモン・ジオベルネ登頂後再びピラット小屋に戻り
一旦570mほど下ってから登り返してタンプル・エクラン小屋まで行く。
ジオベルネ登頂は雨のため岩が濡れ滑りやすいので登攀の多い南東稜ルートは避けて、登攀の少ないノーマル・ルートで行くことにする。もし途中でひどい雨になるようだったら引き返すことも考慮に入れて、5時に出発した。

小屋のすぐ上にルート口があり、たまにケルンが積んであったりする。アンザイレンは必要ないが、岩場が続く。岩場もガレ場ならまだいいが、大股で乗り越えなければならない岩が連続していたりすると思わず鼻息も荒くなってしまう。1時間くらい経っただろうか、時折雪混じりの雨を感じるころ、幸いにも岩場が終わりジオベルネ氷河にさしかかり雪上歩きとなる。気温が低くないせいか雪は凍ってはおらず適度に柔らかいためつぼ足でぐんぐん歩く。斜面が少し急なところはジグザグに、緩やかなところでは直登し、上部に数箇所あるクレヴァスを避けながらコルを目指す。1歩1歩足を進める毎に雲があわただしく動き青空が顔をのぞかせ、コルが近づくにつれて降り注いでいた雨は小雨となり、やがて止んだ。
コル着、7時。


前日ピラット氷河上から撮影


雲が動き青空が見え始める
コルから山頂までは岩場登攀

さあ、雨も止んだことだし山頂はすぐそこ、雨で洗われた空気をお腹一杯に吸い込んで岩に取り付いた。
山頂までは標高差にして100mほど。ピッケルやアイゼンはコルにデポしたので荷は軽い。始めは大きく開いたチムニーを約30mほどだろうか、ナチュラル・プロテクションで登る。尾根に出てからは切れ落ちている右側を避けてやや左側にルートを取る。難易度が付くほど難しい登りではなく、30分後の7時40分、山頂に到着。


エクラン山群で最も高く唯一の4000m峰、バール・デ・ゼクランが手の届きそうなところにあった。その隣にまるで寄り添うようにクーリッジが威厳をもってたたずんでいる。明日登攀するクーリッジのルートを目で追って見るが、簡単に道を開けてくれるようには思えなかった。

登り始め
南東稜とその向こうに見えるピック・デュ・セイ3420m




山頂からの展望


昼食はピラット小屋で取るつもりなので時間に余裕がある。30分近く山頂で山名同定したり山の話をしながら眺望を満喫し、下山へ。
このパノラマから去りがたい気持ちと天気がすっかり回復したこともあり、下り途中の岩場で濡れたウェアを広げて乾かし、私達も日向ぼっこを決め込む。皆一様に思ったのは、「ピラット小屋特性のランチ・オムレツとビールの出前が欲しい!」

小屋に戻ってきたのは10時半頃。デポしておいた衣類などをザックに詰め込んで、今夜泊るタンプル・エクラン小屋へ出発する用意を済まし、早めの昼食を取る。
この山行では朝食と夕食は山小屋で取り、パンにチーズ、生ハム、サラミ、リンゴ等々の昼食分だけ持参してきた。だが今日は先ほどの日向ぼっこで夢見たオムレツを頼むことにした。ボリュームがあるのにフワフワなこのオムレツに、何となく幸せな気持ちになる。

お腹が一杯で昼寝したい気分ではあるが、12時35分にピラット小屋を出発しタンプル・エクランに向う。

小屋の脇から伸びるジオベルネへのルート
この氷河を見ながらのランチ、見納めです
ヴェネオンの谷に一旦下ってタンプル・エクラン小屋を目指す

タンプル・エクラン小屋までは登山道もしっかりした約6kmのハイキング・ルート。谷まで一気に下り、しばらく氷河から流れ出す川沿いに歩いてからまた登り返す。ピラット周辺の景色は次第に遠ざかり、目の前にはバール・デ・ゼクラン南壁が迫ってきた。川沿いを歩いているうちは轟々とする音や風に感じなかった暑さが、登りはじめた途端に強烈にまとわりついてきた。いくつのジグザグを繰り返しただろうか、上方に旗がたなびいているのが見え、やがて小屋の屋根が現れた。

山ツツジのピンクが美しい川沿いのルート
奥がピラット氷河
タンプル・エクラン小屋
タンプル・エクラン小屋からジオベルネ(右の丸い山頂)を眺める
小屋の裏に広がるバール・デ・ゼクラン南壁
ドミトリー内は3段ベット
2段目と3段目に張られた転落防止紐
現在3段目は使用禁止

小屋に到着したのは3時。しばらくテラスでストレッチをしたり雑談をしたり、あるいは湧き水で体を拭いたりした後、明日の準備を整え昼寝をする。

7時夕食。定番の野菜のスープと、いろいろ野菜のラタトゥイユ(煮込み)、チーズに自家製のパン、デザートはチョコレートケーキのフランボワーズソース添え
ここでも食事は美味しい。
宿泊客は20人位だろうか、食堂は賑やかだった。


明日は最終日、かつ上り下りとも体力的に少しきつい山になりそうだ。登っている自分、そしてそこで待っている風景のことを想像しつつ眠りについた。



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